稲作と養蚕 天皇と皇后が受け継ぐ「伝統」のありかた

文/木下聡

稲作と養蚕

天皇陛下は5月25日に皇居で田植えをされ、続いて皇后・雅子さまが5月29日に桑の葉を蚕に与える給桑に臨まれた。今後、天皇陛下は秋の収穫に向け、雅子さまは7月に生糸を紡がれるまで作業を継続される。両陛下の稲作と養蚕は、平成の両陛下より受け継がれたものであるが、その歴史は意外にも浅い。皇后の養蚕は明治4年(1871)から、天皇の稲作に至っては昭和2年(1927)からである。

しかし「両陛下の稲作と養蚕(親耕親蚕)」が全く伝統に根差さないのかと言えば、そうではない。「男耕女織」「夫耕婦織」という社会理念は東アジア圏に古くからあり、中国古典にも登場し、奈良時代ごろ日本にもたらされた。

正史には「男耕女織」およびそれに類する、性別分業を奨励する文言も確認される。『日本書紀』では、雄略紀に皇后の養蚕が記され、継体紀にも「士耕・女績」「帝王躬耕・皇妃親鴬」の文字がみえる。ただし「天皇が稲作を、皇后が養蚕を儀礼的に執り行う」という今日的な有り方は根付かなかったようである。奈良時代の宮廷で「男は耕し、女は織る」という儀礼が実際に行われていたが、わずか3年ほどで廃れてしまった(井上薫「子日親耕親蚕儀式と藤原仲麻呂」)。日本において、天皇・皇后夫妻による「親耕親蚕」が定着するのは、明治以降であり、いわば中国から日本に伝わった儀礼を現代に復古させたものである。

それぞれの具体的な歴史を見てみよう。

天皇陛下の稲作

天皇陛下の稲作は、昭和2年(1927)に昭和天皇が当時住居にしていた赤坂離宮に田んぼをつくったのがはじまりだ。その2年後に住まいを皇居に移してからも稲作は継続。この活動を引き継いだ平成の天皇(現、上皇陛下)は、春に自ら籾蒔きを行い、苗を育て、初夏に田植えをし、秋には稲刈りを行う。

ここで収穫された稲や米の一部は、10月に行われる伊勢神宮の神嘗祭に初穂として奉納され、五穀豊穣を感謝する新嘗祭で神々に捧げられる。

天皇陛下の稲作(宮内庁提供)
天皇陛下の稲作(宮内庁提供)

皇后の養蚕

皇后の養蚕は、明治期から始まった。1871(明治4)年3月14日、昭憲皇后は、中世以降途絶えていた養蚕を始めるにあたり、大蔵大丞(のちの大蔵省)渋沢栄一を招聘し、種々養蚕に関する質問を重ねた。そして、岩鼻県島村(現群馬県伊勢崎市)の養蚕の指導者・田島武平を通じて養蚕婦四名を呼び寄せて万全を期したという。

養蚕所を新築する案も出たというが、結局、吹上御苑の茶屋を改装して養蚕所に充て、蚕種の掃き立て、桑の栽培、給桑などに携わらせた。昭憲皇后ご自身も、蚕室に出向いては、養蚕の様子を見たり、手許で蚕を飼育したりしたという。

その後、吹上御苑の蚕室は、火災で焼失してしまったため、明治末期までは青山御所に新築された養蚕所で、1914年からは皇居内に建てられた紅葉山御養蚕所で作業が続けられている。また皇居内では三カ所に桑畑が設けられ、計3600本の桑の木が植えられている。桑の葉は蚕の餌となる。なお、養蚕が現在のように「神事」の形をとるようになったのは1917年からである。

近代日本の最大の輸出品は生糸(絹糸)であり、日本が経済的に豊かになるためにも、養蚕業を盛り立てていく必要があった。また養蚕は、古来より女性の美徳の一つとされてきており、こうした伝統的・道徳的な意義と、殖産興業という近代的な意義とを融合させ、皇后が率先して養蚕業を奨励する役割を担ったのは、自然の流れであった。

通常、御養蚕は五月の初めに孵化したての蚕を蚕座紙の上に掃き下ろし(掃立て)、細かく刻んだ桑の葉を与えて飼育を始める神事“御養蚕始の儀”で始まる。この儀式のほか、上皇后さまが桑の葉を与える〈御給桑〉が二回、繭を作るまでに成熟した蚕(熟蚕)を一頭ずつ拾い取り、みずから編まれた藁蔟(蚕が繭を作る場所)に一頭ずつ移す〈上蔟〉と呼ばれる作業、できあがった繭を族から掻きとる〈初繭掻き〉、そして六月末に行われる神事《御養蚕納の儀》まで、合わせて六回、御公務としてお出ましになる。

給桑に臨まれる雅子さま(宮内庁提供)

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2 件のコメント

  • もっと、天皇皇后陛下の ことを報道してください。
    同じようなことでも、上皇后一家は 頻繁に 報道されていました。
    何故に、上皇様方と秋篠宮家の 報道ばかりするのですか?
    不思議です?
    今は、令和の時代! もっと天皇家の放送を、きたいします。
    宮中祭祀 興味あり!どのようなことをしているのでしょう。
    皆様が、ストレス 感じないようなかたちで!報道してください。
    宜しくお願い致します。

  • 上皇后にしろ秋篠宮家にしろ報道がすべて自己アピールだから見ている方が、ストレスを感じると思う、やはり皇室の秩序をまもり天皇を中心とし、まわりは天皇をお守りしていると印象付けないとあまりにも。存在する意味がなくなります、そのうちに皇室の存在意義がなくなりそうです、バラバラに自己主張している今の、現状は天皇がお気の毒としかいいようがない、令和の時代が平和でありますようにねがいます、とりあえす眞子さまとこむろもんだいはスッキリ片付け、愛子様を青年皇太子となり令和時代か永く続くことをねがいます、

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